研究・調査
産婦人科医の存続問題で揺れ動いた離島―隠岐病院の経緯と取り組み
灘 久代
1
1徳島文理大学保健福祉学部看護学科
pp.522-527
発行日 2010年6月25日
Published Date 2010/6/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1665101668
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はじめに
隠岐広域連合立隠岐病院(以下,隠岐病院)は,約2万4000人が住む隠岐諸島にあり,唯一,産婦人科医療を提供している施設であった。
隠岐病院は,県と隠岐の島町が運営し,年間,百数十人の出産に対処してきた。しかし2004(平成16)年9月末,島根医科大学(現,島根大学医学部)からの産婦人科医派遣が大学の医師不足の理由で打ち切られ,隠岐諸島は分娩ができなくなった離島として全国的なニュースとなり,一躍,世間の注目を浴びることになった。そして,今や産科の閉鎖は単なる離島の問題ではなくなり,首都圏では緊急の産婦・新生児の受け入れ拒否による痛ましい出来事が,新聞やテレビで繰り返し報道されるなど社会問題になっている。
政府は解決策の1つとして,医療の集中化や施設設備への経済的支援,医師の待遇改善や人件費の助成,医学部定員増,助産師の活用など次々と対策を打ち出してはいるものの,具体的な解決策に至っていないことは周知の通りである。
本調査では産科医不在問題の発端となった隠岐病院の3年余りの経緯と取り組みを明らかにしながら,助産師をはじめ産科医療従事者らが,この現実の状況にどう応え,また向かい合う必要があるのか,1つの示唆を得ることができた。
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