連載 バルナバクリニック発 ぶつぶつ通信・68
今を楽しんで生きる
冨田 江里子
1
1St. Barnabas Maternity Clinic
pp.1032-1033
発行日 2009年11月25日
Published Date 2009/11/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1665101553
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薬をかみ砕いて食べる子ども
フィリピン人の多くは聖書の言葉どおり「どんな時も神を信じ,先を憂えず喜んで生きる」を実践している。先のことは神様に任せて今を楽しむ生き方を実践している人はとても多い。ミレンダもその1人だ。
明るいミレンダとの最初の出会いは8年前にさかのぼる。診療に当時末っ子だった2歳の子どもを風邪で連れて来た。薬は大人用の錠剤しかなく,4分の1に割って水に溶かして…と説明すると,ミレンダはそのまま錠剤を割って「ほら,食べなさい」と子どもへ手渡した。驚いたことに,子どもは何の躊躇もなくポンと薬を口に放り込むと,バリバリとあっという間に飲み下していた。その後も水すら欲せず平然と座っている。どうしてこんなに苦い物を? 私が驚いていると,ミレンダは大笑いして言った。「この子はなんでもかみ砕いて飲み込んじゃうの。薬でも生芋でも石でもね」。薬をかみ砕いて飲める幼児,それを大笑いしながら人前で見せるミレンダは,私のなかに強烈な印象として残った。
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