研究
在日韓国人女性が日本で経験する産褥期の困難さ―韓国の産後ケア概念‘産後調理(sanhujori)’に着目して
申 于定
1
,
松岡 恵
2
,
三隅 順子
2
1東京医科歯科大学医学部付属病院
2東京医科歯科大学大学院保健衛生学研究科リプロダクティブヘルス看護学分野
pp.872-877
発行日 2007年10月25日
Published Date 2007/10/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1665101096
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はじめに
現在日本における外国人登録者数は年々増加し,それに伴い国際結婚率や外国人夫婦から生まれる子どもの出生率が増加している1,2)。その裏には日本での妊娠,出産,産褥において,自国とは違う医療システムや習慣・文化の違いで困難さを感じている在日外国人女性が多い現状がある3)。
とくに韓国人女性は,韓国特有の産後ケア概念「産後調理(sanhujori):産後の養生」があることから,韓国と日本の産後ケアの違いに戸惑いや困難さを感じていることが推察される。「産後調理」は表1に示す6つの原理で構成され,適切な環境において支援者の手厚いケアを受けることにより,産後に必要な休息をとることが新生児の健康にもつながるといわれている4)。その一方で産後の不適切な生活は生涯にわたる不健康「産後病(sanhubyung)」につながると考えられており,韓国人女性は産後病を怖れ産後調理を心がけている4,5)。
また,産後調理を行なうためには他人の支援が必要であるため,韓国では専門的な産後調理機関として産後ケアセンターが全国的に設立されている4)。しかし,日本においては「産後調理」を踏まえた産後のケアは提供されていないため,韓国人女性が産後調理を行なううえでの困難さや,日本の産後の習慣とのギャップに戸惑いを感じることが推察される。そこで,こうした文化の違いから困難さが生じる具体的な事象を明らかにすることで,韓国人女性により適切なケアを提供するために貢献できると考えた。
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