- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- サイト内被引用
はじめに
助産師養成において実習は重要な位置を占めるが,実習の質をどう確保するかについての論議はやっと緒についた観がある。専門職であるならば,修得すべき能力がプロフェッショナルスタンダードとして職能団体との連携により提示され,それに基づいて学校教育で保証する能力が卒業時到達目標として設定され,評価されるべきである。そして,この到達目標が教育機関で共有されてこそ,助産師の質の確保が可能となるだろう。
これまでの実習目標は,出産が中心となり分娩介助例数確保にエネルギーが注がれてきた。助産ケアのコアをマタニティサイクルに置くならば,出産だけが突出されるべきではなく,生理学的にも社会文化的にも妊娠から産褥までの連続したプロセスのなかで捉えられるべきである。なぜなら正常な出産のためには妊娠期のケアが必須であり,出産後は子育てに向けてのケアが求められる。女性と家族がエンパワメントされるためにも継続的ケアの提供が到達目標に織り込まれなければならない。到達目標をタテ糸とするなら,タテ糸は出産に片寄ってきた嫌いがある。
さらにヨコ糸を学習プロセスとするならば,実習の学習プロセスについて十分に検討されてきたとは言い難い。到達目標は,実習初日から達成できるわけではなく,経験と時間を重ねることにより経時的に成長していく。学生は単純なことから複雑なことへ,他者の援助によりできたことが,やがて1人でできるようになる。学習にはプロセスがあり,レベルが設けられ,レベルにそった目標が設定される。その目標をスモールステップとして評価されながら,到達目標へと導かれるならば,実習での学習を効果的に高めることができるだろう。
実習での目標と評価について以上のことを確認したうえで,実習での学習効果を考える場合,学習の転移あるいは思考の再構築が,どのような状況で生起するのかを考えていかなければならない。学習の転移や思考の再構築について,実習での学生たちとのカンファレンスや報告会,レポートなどのプロトコルから検討することとする。
Copyright © 2006, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.