講座
赤ちゃんの歯のために—母親指導の立場から
山下 浩
1
1東京医科歯科大学小児歯科
pp.10-15
発行日 1963年5月1日
Published Date 1963/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611202531
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はじめに
こどもの発育に関するいろいろな統計資料を見ると,最近の大きな特長として,乳児の死亡率が著しく減少したことと,かなり高度の未熟児でも立派に育つこと,ならびにこどもの発育が非常に良好になったことなどが目につきます.これは育児に関する学問や栄養学の進歩によることはいうまでもありませんが,お母さん方の育児についての知識の向上も無視できないものでしょう.
さてこどもを育てるということは,母親にとっては命をかけた必死の仕事で,わが子を自分の肉体の一部以上に考え,どうしたらより丈夫により大きく育てられるか,日夜大変な努力と苦労をしております.毎日乳幼児を相手にしている私どもの外来でも,母子間のきずなが如何にがっちり結ばれているものか,あるいは母子間の愛情の計り知れない深さなど,しみじみと見せつけられておりますが,人間社会の中でこれ程美しい情景は,他には類のないものでしょう.一方昨今のマスコミのPRで,母親の育児知識が著しく向上したことは,まことに結構なことと思いますが,いろいろなタイプの母親に接して気がつくことは,育児意識の過剰というか,育児ノイローゼというか,とかく行き過ぎた育児法が多く,いろいろと小児科医を悩ませておるようです.
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