特集 ―なぜ,参加型なのか―助産に必要なファシリテーターの役割
ファシリテーターとしての助産師―当事者をいきいきと支援するために
金 香百合
1
1HEAL(ホリスティック教育実践研究所)
pp.24-29
発行日 2004年1月1日
Published Date 2004/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1665100644
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はじめに
ファシリテーターの原点は助産師にある――唐突にこんなことをいうとびっくりなさるでしょうか。でも,これは本当のことです。「産婆術」という言葉がありますが,この産婆術の中にこそ,ファシリテーターのありようが凝縮されているのです。助産師という援助者こそが,本来ファシリテーターのお手本なのです。ですから,助産師でない私が今回の原稿依頼を受けた時には,面映ゆい気がしたほどです。私は現在ファシリテーターを仕事にしています。
「ファシリテーター」という言葉に初めて出会う方もあるでしょう。ファシリテーターとは学習支援者や学習促進役といわれる人のことです。従来は学校での学習というと,講義を一方的に受講する方法が大半でした。しかし,近年はグループディスカッションや役割劇(ロールプレイ)やシミュレーションゲームなどを通じて学ぶ「参加体験型学習」というものがいろいろな領域で行なわれるようになりました。環境教育や人権教育,地球市民教育,といわれるような分野では特に盛んに行なわれています。ファシリテーターはそうした参加体験型学習において,学習の進行役をしながら,学習者のもつ力を引き出し,学びを支援します。他稿では,引き出すのではないと表現されており,私も根本的には学習者のあるがままを受け入れるものだと思っています。しかし,学習者本人も気がついていない内在している能力を,第1段階では引き出すこともあるのではないかと思うのです。
本稿では,私の「ファシリテーター論」を軸に,「助産師がよりよい援助者として当事者にかかわっていく」ことはどういうことなのかを考えていきたいと思います。
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