連載 筆から想いは広がって・8
黒々と,いきいきと
乾 千恵
pp.992-993
発行日 2007年11月25日
Published Date 2007/11/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1665101119
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ジャワ島東部の町,ブリタル。午後八時,熱気に満ちたざわめきのなか,音楽が始まった。インドネシアの伝統的な民族楽器のアンサンブル,ガムランの演奏だ。奏者たちの奥に見える舞台にはスクリーンが張られ,両脇には大小さまざまの,皮で作られた平たい人形がずらりと並ぶ。ジャワに昔から伝わる影絵芝居,ワヤン・クリが,これから始まるのだ。
影は,普段でも気になる存在だ。自分自身の影から,物や人,建物や生き物,気がつけば,あらゆるものに影は寄り添い,光の種類や角度によっては,思いがけない姿を現す。親しみや驚きをこめて,これまで何枚も「影」を筆で書いてきた。
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