連載 英国助産婦学生日記・その32
病院実習大詰めのころ
日方 圭子
1
1英国・サリー大学助産課程学生(ダイレクトエントリーコース)
pp.793
発行日 2003年9月1日
Published Date 2003/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1665100597
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●コミュニティから戻って
コミュニティ最後の実習が終わり,病院へ戻って分娩室と母子室で7週間働いた。病院実習に入る初日はいつも緊張する。コミュニティに慣れると病院の医療介入が多いケアに疑問がわいて,なかなか馴染めない。特に,今回の分娩室はいつもよりずっと忙しく,いつもより緊急事態の頻度が増しているようにさえ思えた。現に,実習先の病院での年間出産数は前年を10%上回る予想で,4200件。分娩棟内に2床のHDU(High Dependency Unit)が新設され,助産婦が担当しなければならない仕事は正常/異常分娩から,HDUまで幅が広がっている。そんな状況で,HDUはいつも使われているのに,低リスク分娩専門エリア(分娩室には新生児蘇生装置もない)はほとんど使われていない様子を見ると,助産の仕事が,ここでは「産科看護婦」に近くなっているように感じられて仕方なかった。
イギリスの2001年度の帝王切開率は22.3%と前年を0.8%上回る。そのうちの半数以上が緊急帝王切開だという。吸引/鉗子分娩が11%。お産の半数以上は普通分娩だが,それでもその中の多くが何らかの医療介入(誘発,人工破水,陣痛促進剤など)を受けているので,本当の意味での正常分娩の数はぐんと少なくなるはず。自宅分娩は2%に留まっている。この統計がそのまま実習先病院の現実にも反映されているように見えた。
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