連載 やさしい社会保障 政策はだれのもの?・9
みんな出世しない社会(下)―格差問題を考える・2
八神 敦雄
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1厚生労働省雇用均等・児童家庭局保育課幼保連携推進室
pp.812-814
発行日 2006年9月1日
Published Date 2006/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1665100403
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みんなホリエモンになれるわけがない
「社会のなかで格差が拡がっていると思うか」と問われると,そんな気がするという人は多いだろう。新聞社の世論調査でも,「日本が格差社会になりつつある」と思う人が74%に上っている【注1】。しかし,何をもって格差が拡がっていると感じているかといえば,おそらくは,テレビでセレブの豪邸に潜入する番組を見たり,ホリエモンや村上ファンドに代表されたヒルズ族の華麗な生活を週刊誌で読んだりして,ほほぅ,と感心したりため息をついたりしながら,そんなものに縁のない自分の身の回りと比べて,「やっぱり格差の拡大は進行していたんだ」と確認した気分になる,というのがほとんどではなかろうか。しかし,お金持ちは昔からいたし,お金持ちに対する憧れや,やっかむ気持ちというものはいつだってあるものだ。
みんなホリエモンになれるわけがない(なってもらいたくもないが)。マスコミのせいで,だてにお金持ちの存在を知ってしまったがために,“格差”が増しているように感じるだけで,これをもって実際に格差社会が進行している,というものでもないだろう。本当のところはどうなのだろう。
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