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はじめに
当院は昭和44年に小山病院として開院し,平成14年に小山記念病院を設立(増設)した。ベッド数160床,うち30床の産婦人科病床を有する中規模病院である。所在地の鹿嶋市はもちろん,茨城県南の鹿行地区の中核を担っている。出産件数は年々増加し,昨年度の出産件数は612件である。鹿嶋市の出生率は1.67(平成14年度)と,全国出生率第1位の沖縄県の数値に近く,兄弟数も多い。周囲の人々のあたたかい目が子どもたちに注がれている地域である。しかし,子どもの数が多い一方で児童館がなく,乳児を持つ親が集まる専用スペースや,気軽に出かけられるオープンな場所がないという問題がある。とくに,出産後の親子が外出する機会が少なく,家に閉じこもりやすい傾向が強い。
こうした環境のなかで,病院に通う妊婦が妊娠中から友達を作り,楽しい周産期・育児期を迎えられること,そしてそのためのスペースの確保がスタッフから望まれていた。また,その需要も大きいと推測された。そこで,インフォーマルな分野で妊産婦をサポートしていこうと,病院内に2名の保健師(非常勤)が採用されることになった。保健師といえば,病院における業務は,看護や検診業務が主流であり,「地域」の視点を子育て支援に生かすには,行政しか場がなかった。これまで病院と地域の連携が必要とされながらも,子育て支援は縦割りといわざるを得ない状況にあり,児童虐待などの予防のためにも病院と地域の連携が強く求められている。
こうしたことから今回,病院という場で,助産師をはじめ,他職種と連携をしながら,さまざまな院内プログラムを構築した。産婦人科発信の新システムを考え,妊産婦の個別の継続フォローを長期的に支援するこの取り組みについて,僭越ながらここに紹介する。
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