特集 「わかること」「わからないこと」の間にある遺伝の話
遺伝看護とは?―周産期遺伝医療にかかわる助産師の役割
有森 直子
1
1聖路加看護大学
pp.117-123
発行日 2005年2月1日
Published Date 2005/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1665100142
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「いでん」のパラダイムシフト
医療は,身体的,心理社会的に良好な状態にあることをめざし貢献してきました。21世紀を代表する発見となったヒトゲノム(人間のもつ遺伝情報の総体)の解析は,個人の遺伝情報について「わかること」がイコールすべての人にとってベストな選択ではなく,個人の人生における価値観を尊重して慎重にその選択を行なわなければならないという,患者主体の本来の医療のあり方を私たちに投げかけています。
病気になる前にその病気になりやすい体質の遺伝子が「わかること」,子どもを産む前にその子どもの限られた範囲の情報が「わかること」,こうした目的のための検査は,その後に自分が何を決断するのか,その結果はどの範囲の人に影響を及ぼすのかを検討することなしに,安易に行なうべきではありません。羊水検査を例にあげるなら,その検査において「わかること」は,染色体の数と構造の状態でしかなく,検査によって子どもの健康状態のすべてがわかったように安心することはできないという検査の限界を知っておかなければなりません。
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