特集 「わかること」「わからないこと」の間にある遺伝の話
遺伝とエンパワーメント―当事者団体の果たす役割
武藤 香織
1
1信州大学医学部保健学科社会学研究室
pp.124-129
発行日 2005年2月1日
Published Date 2005/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1665100143
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日本ハンチントン病ネットワークのスタッフとして
私は1990年代後半から,常染色体優性遺伝の晩発性神経難病の患者さんや家族,また当事者団体とかかわりをもたせていただいた立場にある。最初は調査をする立場としてかかわり,そのうちボランティアとして,いくつかの会の発足や運営にかかわるようになった。
現在スタッフとしてかかわっているのは,日本ハンチントン病ネットワークという団体である。2000年の設立時には深くかかわったが,4年目となるいまは,当事者スタッフが運営の中心を担い,私は海外のハンチントン病(以下,HDと略)の当事者団体とのやりとりや広報活動の一部を担わせてもらっている。本人中心で築かれてきた日本の障害者運動の歴史から考えると,第三者が当事者団体にかかわることには若干の難しさや批判も伴うが,「当事者に何もかもさせていいのか」という観点から,海外のHDの会では第三者が大きな役割を担っており,そこから学んだ運営方式でもある。これまでも,この病気や当事者団体の活動については折に触れて書く機会をいただいた。会の発足以前に初めて取り組んだ調査(対象5名)では,当事者団体へのニーズがあまりないことや遺伝のことを話せないでいることに家族が困っていることを1),会ができてからは,親から病気の存在について聞かなかった子どもが苦しんでいた事例から,家族のなかで話すことへの難しさについて触れた2)。また,発症前遺伝子検査よりも介護についての議論が圧倒的に多いことについても書いた3)。そして,徐々に会の活動も成熟しつつあり,今年は「舞踏」ワークショップを開催したこと4)なども書いてきた。
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