今月の臨床 臨床遺伝学─診療に必要な最新情報
遺伝情報の取り扱い―臨床遺伝部の役割
玉置 知子
1,2
,
宮本 正喜
3
,
齊藤 優子
2
1兵庫医科大学遺伝学
2兵庫医科大学病院臨床遺伝部
3兵庫医科大学医療情報学
pp.1114-1121
発行日 2007年9月10日
Published Date 2007/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409101561
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はじめに
遺伝情報の取り扱いは,患者・家族・クライエントの診療に重要であることはいうまでもないが,遺伝医学の教育・研究の立場も同時に考える必要がある.取り扱いの基盤として,ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針および個人情報保護法(関連ガイドライン)の理解が不可欠である.
兵庫医科大学では1974年,当時まだ数少なかった染色体検査室を開設したことに伴い,その結果を患者とご家族に十分に理解していただく目的で遺伝相談外来が開始された.染色体検査室が中検内科に所属していたことより,内科の診療録を作成していたが,この当時から,診療録は医事請求などで不特定の人員が取り扱うため,診療録には受診の主な内容について簡潔に記載し,詳細な内容は別に記録し独立して保管することとした.1988年には臨床遺伝部として独立し,独自の診療録を持つようになったが,遺伝カウンセリング記録や染色体分析写真は部内で保管し,部のスタッフおよびスタッフの許可が得られた医師のみが閲覧可能とした.現在のところ,25年前の再診にも応じられる状況である.このようにわれわれの施設では,他施設を参考にすることができなかったため独自の判断で遺伝情報管理を行ってこざるを得なかった.
このような経験から考えると,上記の指針・ガイドラインが策定されたことにより,研究環境や遺伝診療環境が整備しやすくなり,遺伝情報を取り扱う施設・人材・方法の具体的な目途がたつようになり,その役割は大きいことが実感される.以上の経験より,遺伝情報の扱いを考えてみたい.
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