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「かかわれない」妊婦たち
母校でもある東京医科歯科大学大学院の門をたたいたのは,2000年4月のことだった。入学の背景には,臨床時代も教員時代も,いつも気にかかっていたこと……すなわち,女性が妊娠に気づき,確定して母子手帳をもらうあたりの妊娠6~12週くらいの時期に,病院では婦人科扱いのためか,助産師がなかなかかかわらない,かかわれないということ。そして,妊娠もまだまだ実感がわかないこの時期に妊婦はいったいどうしているのだろうという思いがあった。また,実際にそうした時期に出生前診断としての羊水検査を受けるかどうか悩む女性に,助産師外来や病棟で出会い,どのように接したらよいのかとまどい,必要とされるケアを提供できなかったのではないかという自分自身の反省もあった。こうした疑問や経験から妊娠初期の女性の声に耳を傾け,ケアの方向性などを見出すということが,研究上も実践上も私のテーマであると感じていた。
あれから5年近くの年月が過ぎ,遺伝子などの検査を受けるには,遺伝カウンセリング(図1)が必要であるとの認識も世間に広まりつつある。それに伴い,全国の大学病院・国立施設における遺伝カウンセリングへの看護職の関与は,半数以上にのぼっている(全国遺伝子医療部門連絡会議2004年度資料)。広く遺伝的問題にかかわる看護職として共通のケア・問題を考えようと,2000年に発足した日本遺伝看護研究会は会員数を増やし,学会組織運営に向け,発展しつつある。出生前診断に対するケアへの関心も高まり,看護系の学会などでも演題をよく見かけるようになった。また,「遺伝看護」の領域の専門職を養成するため,東海大学健康科学部,山口大学医学部保健学科で来年度より大学院に遺伝看護を学ぶためのコースが新たに設置される。
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