特集 満足で安全なお産 「院内助産院」をめざそう
院内助産院で安全と快適性は得られるのか?―医師の立場から
井上 裕美
1
1湘南鎌倉総合病院産婦人科
pp.312-317
発行日 2006年4月1日
Published Date 2006/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1665100084
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はじめに
私の88歳になる母は,私の姉を戦時中,疎開先の四国の屋島でお産をし,私を東京の小金井の自宅で産み,弟を近くの病院で産んだ。私の3人の娘は,すべて病院で分娩監視装置の下に分娩台で生まれた。そして今私たちの分娩室には畳が敷かれ,多くの妊婦たちはそこにどっかりと座り込んだ夫や家族に囲まれ,ゆっくりとした時間のなかで和みのあるお産をしているように思える。まるで時間が戻ったのかのように。
昔と違うことは同じ畳のうえでも,そこは病院であり,さまざまな医療器具があり,産科医も小児科医もそこにいるということなのだろう。
しかしその内容はといえば,そのほとんどは助産師が行ない,産科医は何か異常があった時に呼ばれるようになっている。そのお産が正常経過をたどり,産科医の診察を必要としない状況下で,妊婦さんとその家族が産科医の診察を必要としないことに同意をし,そして薬の処方や会陰裂傷の縫合を助産師が行なうことができるのであれば,一昨年視察したフランスのラマーズ医師のいたパリのバリエ病院や,ミッシェル・オダン医師のいた北フランスのピテイビエ病院とどこが違うのだろうか?
私たちの病院が歩んできた道を振り返りながら,そして並行して行なってきた海外の病院巡りを思い出しながら,今後の日本の院内助産について語ってみたい。
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