特集 住環境と看護—ナイチンゲールを在宅に生かす
[第1章]快適性
藤井 千枝子
1
1慶應義塾大学看護医療学部
pp.598-601
発行日 2001年7月1日
Published Date 2001/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661903765
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住環境における看護の必要性
わが国ではこの半世紀に,死因構造が感染症から生活習慣病に変化したが,結核など再興感染症も注意が必要となっている.平均寿命は1948年の男性55.6歳,女性59.4歳から1998年には男性77.2歳,女性84.0歳と20歳以上伸びている1).分子レベルでの解明も次々に行なわれ,遺伝子診断や遺伝子治療の臨床応用とその倫理に関する検討もなされるようになってきている.しかし,病む人々に対する普遍的な援助は,生命の消耗を最小限にして,治癒を促すことである.近年は,治すことだけでなく癒すことへの関心が高まっている.治療技術のみが進歩しても,療養環境が十分でなければ治癒に導くことはできない.
老年人口の割合は年々上昇しており,1999年の調査では3世帯に1世帯は65歳以上の高齢者世帯である.高齢者の単独世帯も増加しており,1975年の4.4倍の約270万世帯にのぼる1).このような変化のなかでは,要介護高齢者の急増に対し介護力が逆に減少することや,高齢者と障害者の生活自立や社会参加支援のためのノーマライゼーション推進とQOL(生活の質)の向上に対する社会の対応がクローズアップされている2).
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