連載 苦手意識を解消! 実践的な地域アセスメントのポイント・3
「象徴的な個別事例」から地域を見る
吉岡 京子
1
1東京大学大学院医学系研究科健康科学・看護学専攻地域看護学教室
pp.330-334
発行日 2023年8月10日
Published Date 2023/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1664201971
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
- サイト内被引用
「象徴的な個別事例」に着目する意義
地域アセスメントは、ご存知のとおり国内外を問わず保健師に必須の技術・能力であり、基礎教育で必ず学生に教授されています1,2)。臨床に出てからも、入庁時や担当部署の異動時に、地域の概況を把握したり、新たな健康課題について探索したりする際には、必ず地域アセスメントを行うことになります。しかし、実際に取り組もうとした時に、それに必要となる膨大な資料集めや分析の労力と時間を考えると、二の足を踏んでしまう。そんな読者に対して、今回は「象徴的な個別事例」3)に着目し、その個別事例を糸口にして地域アセスメントを行う方法を提案します。
「象徴的な個別事例」と言ってもさまざまですが、「こんな大変な課題を持つ事例は初めてだ」あるいは「どう支援すれば良いのか途方に暮れる」というような、非常に複雑かつ多重な健康あるいは生活に関する課題(以下、健康・生活課題)4)を持つ事例を思い浮かべてみてください。保健師が個別支援している対象者は、2タイプに整理できます。すなわち、「①初回(または数回)の相談で問題解決する事例」と「②継続的な支援を必要とする事例」です。「象徴的な個別事例」は、後者にあたります。そして、その対象者の多くは、課題となっている健康の社会的決定要因5)が幾重にも重なり合っています。
Copyright © 2023, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.