Japanese
English
研究と報告
特異なる器質性痴呆の1例—図式,グシュタルトおよび象徴について
A case of peculiar dementia after brain injury: Some considerations as to the relationship between scheme, Gestalt and symbol
越賀 一雄
1
,
浅野 楢次
1
,
浅野 楢一
1
,
小谷 健治郎
1
K. KOSHIKA
1
,
N. ASANO
1
,
N. ASANO
1
,
K. KOTANI
1
1大阪医科大学神経科教室
1Department of Psychiatry, OSAKA Medical College
pp.305-314
発行日 1960年5月15日
Published Date 1960/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405200219
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われわれは脳外傷後遺症として特異なる痴呆状態を呈した1例を経験した。われわれはこれについて種々の検査を施行し,以下述べるような興味ある知見をうるとともに,図式,ゲシュタルト,象徴について次のごとく考察を加えた。
1.I.Q.107ないし97で知能はその限りおおむね平均知を示した。
2.「失語,失行,失認の検査により軽い同時失認を認めたのみでその他の大脳病理学的な病巣症状は証明しえなかった。
3.図式をカントのいうように感性と悟性との媒介的な役割を有するものと解するとき,図式は認識が成立するために必らず働いているものである。ある物体,ある絵が認識されるには,まずその左右上下の空間的関係が成立させられねばならないが,この関係を成立せしめる働きをなすものが図式である。しかして失認のみならず,失語,失行を含むいわゆる大脳病理学的症状は全て図式の障害と解することもでぎる。しかしながら本例ではかかる意味での図式の障害は存在しない。
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