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はじめに
調査の背景と概要
2019年末の中国武漢市の肺炎増加の報道から始まった新型コロナウイルス感染症の流行1)は,現在では,ヨーロッパ諸国だけではなく,世界の全ての国にとって大きな脅威となっている。
日本は,発生源の近隣で人的交流も多く,比較的初期から感染が確認された。そして国内では,すでに3月2日から全ての小中学校に臨時休校の要請がなされるなどの全国的な対策が取られ,3月25日には大きな経済的損失が予想されるにも関わらず東京オリンピックの延期が決定された。さらに,4月7日には緊急事態宣言が出されるなど,国民生活にも社会経済にも大きな影響を及ぼしている。
今回,この新型コロナウイルス感染流行に関する意識や行動について,医療従事者を中心とした全国インターネット調査(n=414)を行った。調査時期は,WHOがパンデミックを表明したことが報道された3月13日から3日間で,その分析から,この時点での医師,看護師および理学療法士等の医療従事者集団が,この出来事をどのように捉え,どのような評価を持ったのか,それに対処するためにどのような行動を取ろうとしたのかについて記述的に紹介したい。
なお,この調査は別の研究の一環として実施され*1,比較対照は小中学校教師(以下,教師)集団および公認心理師・臨床心理士(以下,心理師)集団である。
対象者数は,医師・歯科医師(以下,医師集団)108,看護師・保健師・助産師(以下,看護師集団)99,理学療法士・作業療法士(以下,PT・OT)66,教師113,心理師28で*2,統計的推計は基本的にχ2検定により部分的に分散分析を用いた。
感染の状況は日々大きく変化しているため,この調査は小規模でもあり一時点の断面的な知見である可能性がある。しかし,この大きな危機に医療従事者がどのように対応しようとするのかという一般的傾向を伺うことができ,これは効果的な感染対策の基盤の一部となると考えられる。この報告が,今後の医療体制を維持するために資することを願っている。
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