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はじめに
プラダー・ウィリー症候群(Prader-Willi syndrome:以下,PWS)は,臨床症状が年齢とともに変化する遺伝子疾患である。乳児期早期には,外見的特徴として色素低下や外性器低形成等があり,著しい筋緊張低下や哺乳障害がある。こうした所見からPWSが疑われ,遺伝子検査で診断される。その後,次第に精神運動発達遅延が露見し,幼児期には,過食や知的障害や低身長,学童期には,過食による肥満,知的障害や行動上の問題,思春期・成人期には,肥満に伴う糖尿病や呼吸不全,性腺機能不全等の多様な症状を呈する。発生頻度は,出生児の約1万5000人に1人と推測されている。現在,PWSは小児慢性特定疾病94,指定難病193となっている。
PWSがある患者(以下,患者)の医療について,わが国では,永井ら1)が書籍を出版し,適切な情報が入手できるようになった。また,1991(平成3)年には,患者・家族の会である「竹の子の会」2)が設立,2005(平成17)年には,「日本プラダー・ウィリー症候群協会」3)が国際PWS協会の日本支部として設立された。しかし,支援の具体的情報は未だ乏しい。
諸外国では,1975(昭和50)年に,PWS協会(米国)4)が患者・家族と支援者で設立され,1991年には,国際PWS協会5)が設立され,PWSの医療から教育・支援・福祉まで広範な情報をウェブで発信している。しかし,患者・家族の地域支援に関する情報は見当たらない。
筆者が本稿執筆時に所属する宇和島保健所では,1989年(平成元)年に複数の患者を把握した。個々に支援していく中で,親たちが,肥満に配慮した育児や,将来の合併症の予防,学校生活等について悩んでいたことから,親子の交流や情報交換の場として,1990(平成2)年に全国で初めて「PWS親子の集い」(以下,「親子の集い」)を開催した。その後,関係者の協力のもと毎年開催してきた。
今回,患者の成長とともに変わる課題等について,保健所が中心となり,「親子の集い」等を通して実施した地域支援の取り組みを振り返り,その意義について検討した。本稿は,保健所保健師が患者の生活に密着した支援モデルを示し,他の保健所での実践の参考となる情報を提供することが目的である。
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