特集 家族
地域保健活動と家族
華表 宏有
1
Hiroaki KAHYO
1
1産業医科大学公衆衛生学教室
pp.790-795
発行日 1986年12月15日
Published Date 1986/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401207376
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■はじめに
現代のわが国は世界一の長寿国となり,国民一人ひとりの人生80年型の生活のあり方が,さまざまな角度から議論の対象とされている.わが国が急速な勢いで突入しつつある「高齢化社会」での生存の条件とその対応策は,公衆衛生の領域で働いている者にとっても,大きな関心事であることはいうまでもない.
本誌では1973年4月号に,今回と同じテーマ(家族)で特集をしているが,当時はそれほど顕在化していなかった家族をめぐる諸問題について,13年後の現在では,研究者のみならず一般大衆やマスコミの目が一斉に向けられるようになった.確かに社会の様相が少しずつ変化してきていることを実感しないではいられない.その主たる点を列挙してみると,離婚率の漸増に象徴される,家庭の崩壊現象が少しずつ広がってきていることがまず第一に挙げられる.このほか寿命の延長と核家族化の促進による単身老人世帯の増加,そして痴呆性老人の介護の問題.中年期の単身赴任による本人とその家族に与える心身両面での健康問題や,うつ病と自殺の増加.小・中学校でのいじめの増加と,それを助長しているといわれている家庭での両親の教育の姿勢等も,見逃すことのできない今日的な社会問題である.
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