連載 数式不要!はめ込み統計学 保健師のための統計これだけ・9
傾向性の検定—コクラン・アーミテージ検定
加藤 丈夫
1
1山形市保健所
pp.790-795
発行日 2019年9月10日
Published Date 2019/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1664201273
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はじめに
傾向性の検定とは?
今回は,傾向性の検定について学習します。この検定も保健領域では有用な検定法の1つですので,この機会にぜひ習得してください。まずは,図1をご覧いただくと,傾向性の検定を直感的にご理解いただけると思います。
これは架空のデータですが,ある地区の成人男性の1日の喫煙本数を,少ない順に4つのグループ〈0本〉〈1〜9本〉〈10〜19本〉〈20本以上〉に分け,各グループの肺がんの頻度を示しています。A地区では,喫煙本数が増えるに伴い,肺がんの頻度も階段状に上昇しています。つまり,喫煙本数と肺がん頻度には,用量依存性があるように見えます。用量依存性というのは,一方(上記の例では喫煙本数)が増えれば,他方(上記の例では肺がんの頻度)も漸増する関係,あるいは逆に,一方が増えれば他方が漸減する関係,を言います。それに対して,B地区では,喫煙本数の増加に伴い,肺がんの頻度が漸増している訳でも漸減している訳でもありません。つまり,用量依存性は認められません。
上記の例のように,「生活習慣」と「病気」との間に有意な用量依存性があるか否かを評価する方法として,コクラン・アーミテージ検定を用いることができます。上記の例では,生活習慣は「喫煙本数」,病気は「肺がん」です。
別の例を挙げれば,運動習慣の程度を,1週間のうち〈1日もなし〉〈1〜2日〉〈3〜6日〉〈毎日〉のように4段階に分け,運動する日数が増えれば,糖尿病の頻度が有意に減少するか否かの判断するような場合も,コクラン・アーミテージ検定を用いて解析できます。
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