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はじめに
東日本大震災および東京電力福島第一原子力発電所の事故から3年半が経過し,福島県A市では災害公営住宅建設・移転が進み,事故前と変わらない日常生活が戻っている。放射線に関する検査や健康管理体制も整い,放射線不安に関する住民の直接の訴えは減少している。
しかし,2012(平成24)年度に実施された調査においては,放射線健康不安に関する問いの「将来,放射線の影響で深刻な病気にかかるのではないかと心配している」に対して,23.4%が「とてもそう思う」と回答したという結果もあり1),決して,住民の放射線不安が解消したわけではないことが予想される。
A市においても,研究班*との協働事業の実施を通して,決して住民の放射線に対する不安や疑問がなくなったわけではなく,保健師は今後も長期的に,住民とともに放射線の健康リスクと向き合い,住民の健康支援をすることが求められていると考えられた。
保健師は,災害時も平穏な日常においても,どのような場合でも住民の身近なところで健康支援を行い,住民の健康を守る役割と責務がある。放射線に関連した健康支援は事故の起こった緊急時だけの問題ではない。この考えにもとづき,通常の保健活動の中で他の健康リスクと同じように,長期間にわたる健康支援をどのように行っていくことができるかを,研究班との協働事業において模索してきた。
その中で,放射線に関連した健康支援の有効な方法として,既存事業の中で行う放射線教育という方法(連載第5〜7回参照)に取り組んだ。さらに,保健師が既存事業や日頃の保健師活動で使用できるリーフレットを作成し,それを普段の健康支援で用いるという方法の実施を検討している。本稿では,後者の「既存事業や日頃の保健師活動で使用できるリーフレットの作成」に至る経過と,リーフレットの内容について紹介したい。
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