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はじめに
2009(平成21)年,「介護予防マニュアル改訂版」が厚生労働省より発行され1),そのなかで運動器の機能向上マニュアルにおいて,「骨折・転倒予防」「膝痛予防」および「腰痛予防」といった3つの柱をもとに,具体的な介護予防の進め方が新たに示された。この3つの柱に対する運動介入プログラムの効果については,マニュアルの中にエビデンスを示した報告が多く紹介されている。またプログラムの実施により,参加者にもその効果が理解されつつある2)。
大阪府泉北郡忠岡町による「忠岡町高齢者福祉計画及び介護保険事業計画」の見直しのために実施された基礎調査によれば,「介護が必要になった原因」として,とくに女性の軽度認定者(介護保険要支援1・2および要介護1の者)による骨折・転倒が原因全体の22.7%と最も高く,次いで関節疾患が16.6%となっていた。一方,男性に関しては脳卒中が22.7%と最も高く,骨折・転倒は9.6%(15項目中5位),関節疾患については4.8%(15項目中14位)だった3)。
このように,「介護が必要になった原因」の調査結果は,一部例外はあるものの,国の国民生活基礎調査4)の結果と同様,骨折・転倒および関節疾患という運動器に関わる項目が原因の上位に位置していることが概観できた。このような健康課題に対しては,介護予防の推進が不可欠であり,とりわけ骨折・転倒予防および関節疾患などの運動器の機能向上に着眼した事業を進めていくことは,介護を必要とする者の増加を将来的に抑制させていくうえで重要であると考えられる。
そこで忠岡町では,厚生労働省による指針にしたがって運動器の機能向上プログラムを進めてきたものの,運動教室の参加前後における参加者の介入効果については,事業評価を行ううえで有用な情報を得るまでには至らなかった。その理由として,運動指導および体力測定についてはアウトソーシングの活用によって実施できたものの,測定した結果の解釈や統計処理等が,不十分な状態で事業評価が進められてきたことが挙げられる。
その改善のため,2012(平成24)年度より筆者の所属する体育系大学(以下,大学)が,忠岡町との連携を図り,教室の運動指導のみならず事業の企画・準備から事後の評価や参加者へのフォローに対しても技術的支援という形で関わる機会を得た。
本稿では,自治体と大学が連携しながら,介護予防事業を展開した一例について報告する。
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