連載 知っておきたい,これからのメンタルヘルス・10
精神障害の普及啓発に関する評価研究 その1
保坂 隆
1,2
1聖路加国際病院精神腫瘍科
2聖路加看護大学大学院
pp.894-900
発行日 2011年10月10日
Published Date 2011/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1664101716
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はじめに
近年の精神障害についての普及啓発としては,2004(平成16)年3月の「こころのバリアフリー宣言―精神疾患を正しく理解し,新しい一歩を踏み出すための指針」が知られています。しかし,このキャンペーンによってどの程度,精神障害について普及啓発されたのかという,いわば,普及啓発の評価に関してはどうだったのかは曖昧です。
これに関して,2006(平成18)年度厚生労働科学研究「精神保健医療福祉の改革ビジョンの成果に関する研究」(主任研究者:竹島正)の「こころのバリアフリー宣言」の内容に関わる調査結果によれば,「考えている」「やや考えている」と回答した割合は,次のとおりです。
・「こころの健康」への関心 82.1%
・精神疾患を自分の問題として考えている 42.2%
・ストレスを減らす生活を心がけることが必要である 94.5%
・こころの不調に早く気づくことが大事である 96.2%
・精神疾患は早期の治療や支援で多くは改善する 91.2%
・精神疾患は誰もがかかりうる病気である 82.4%
とくに,「精神疾患は誰もがかかりうる病気であるか?」という設問に対する「そう思う」と回答した割合(82.4%)が,51.8%(全国精神障害者家族連合会調査)と比べて高いと評価されることがあります。しかし,この数字の変化にはあまり説得力がないことには誰もが気づきます。つまり,それだけ,精神障害および精神障害者についての普及啓発に関しては,その評価が曖昧になされてきたことになるのです。
そこで,今回と次回の2回にわたって,精神障害の普及啓発活動の評価について検討してみたいと思います。
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