連載 町で暮らし人と出会う・5
地産地消のおじいさん
森 まゆみ
pp.458-459
発行日 2011年5月10日
Published Date 2011/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1664101607
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宮城県の南端,丸森町というところに4年ほど畑を持っていた。わたし自身,50代に入って,東京の生き馬の目を抜くスピードの速さについていけなくなっていた。本の売れ行きとか作家のゴシップとかがどうしても耳に入る精神の業界化もいやだった。長年の父の望み,農業もしてみたかった。丸森は父方の祖父母の出身地でもある。50代は林住期,少し土に親しむ生活をしよう,そう思った。
丸森はその名の通り,里山に囲まれた気候も穏やかな所であって,人気もいい。言葉ものんびりと「ありがとなーい」「あがらーい」「食べてくなーい」というような,やさしい人が多いところだ。町には町立病院はじめ開業医もあり,福島からも仙台へも1時間くらいと医療環境は悪くないし,保健師さんもがんばっておられると聞く。しかし,降るような星空,おいしい水,いい空気,地場の野菜に恵まれていてもみんなが健康かというとそうでもないらしい。
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