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はじめに
兵庫県では,1989(平成元)年度に「兵庫県難病患者等保健指導事業実施要綱」を定め,難病患者・家族への支援を開始した。2007(平成19)年4月現在,県下9か所の圏域ごとに難病保健指導事業を展開している。2002(平成14)年度には,兵庫県が「難病患者等保健指導事業マニュアル」(以下,マニュアル)1)を作成し,筋萎縮性側索硬化症(以下,ALS)や脊髄小脳変性症(以下,SCD)など,重症神経難病患者に対する在宅療養支援の充実・強化を図っている。
兵庫県北部に位置する但馬圏域は,面積は県全体の4分の1を占めるが,人口は30分の1であり,過疎,少子高齢化が進んでいる。山地が約70%を占め,豊かな自然環境が残っている一方で,夏は暑く,冬は積雪のある地域である。但馬圏域の特定疾患医療受給者証の交付件数は,2007年度末871人であり,そのうち,ALS患者は23人,SCD患者(多系統萎縮症を含む)は87人である。交付件数から推定すると,但馬圏域では,ALS患者の有病率が人口10万人当たり12人(全国2~7人),SCDの有病率が37人(全国18人)と非常に高くなっている。
但馬圏域では,豊岡・新温泉・和田山の3健康福祉事務所(保健所)により難病保健活動を行ってきた。その結果,ALS患者への支援は,専門病院を中心とした在宅療養支援体制が整備できた。しかし,SCDは運動失調を主症状とする疾患で,長期にわたる介護や経済的に深刻な問題を抱えるにもかかわらず,進行が緩徐であるため,適切なサービス利用に結びつきにくく,保健師自身も効果的な支援方策が見出せないため,関わりにくさを感じていた。
そこで,今回,SCD患者の在宅療養支援に役立てるため,但馬地域のSCD患者の実態を分析し,課題の明確化に取り組んだので報告する。
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