連載 赤いコートの女・3
苦慮する福祉事務所
宮下 忠子
1,2,3
1元東京都城北福祉センター
2元東京都精神保健センター
3現「コミュニティワーカー制度を考える会」
pp.908-910
発行日 2004年11月1日
Published Date 2004/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401100511
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数日後,再び関医師に問題ケースの相談ボランティアとして呼ばれた.用件も終わり帰ろうとした時,「会ってほしいという方々がいるのですよ」と言われた.M区福祉事務所保護課のM係長とAケースワーカーだった.
「実はですね,先日行われた街頭相談にやって来た,妊娠をしている女性ホームレスのことなのですがね……」
対応に苦慮しているので,もし参考意見があったら聞かせてもらいたいとのことだった.私の知識や体験が参考になるかはわからないが,あの女性ホームレスに関心を抱いていたので,即座に「いいですよ」と答えていた.
実は,保護課にボランティア団体がやってきて,「父親不明の妊娠をして出産後も公園で野宿を続けている女性を,何とか保護してほしい」との要請があったのだという.だがその女性は,どうしてもこちらの働きかけを拒絶し,身震いしながら施設収容の話を拒否する.行政の対応に馴染めないケースであり,売春歴もあり,どのように対応したらよいのか苦慮しているとのことだった.また,彼女に保健師やケースワーカーが接触し話し合おうと試みるが,報道関係者たちがカメラを回し待ち構えていて近づけず困っている,どうしたらよいかとのことだった.
私は,参考になればと,山谷で相談員としてかかわった女性たちについて話を始めた.
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