連載 「健康格差社会」への処方箋・【最終回】
変化の兆しはどこに
近藤 克則
1
1日本福祉大学社会福祉学部
pp.942-947
発行日 2007年10月10日
Published Date 2007/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1664100870
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本連載を書こうと思ったきっかけは,拙著「健康格差社会―何が心と健康を蝕むのか」1)を読んだ人から寄せられた声であった。「『健康格差社会』であることはわかった。しかし,いかなる社会にも格差はあるから,是正することなどできないのではないか」とか,「対策はあるのか」という疑問である。
これに対し,「根絶はできなくても抑制はできる」「抑制する政策の手がかりは得られている」「実際にヨーロッパの国々では,健康格差を是正する政策をすでに採用している」ことなどを,1年にわたり紹介してきた。そして,日本でも取り組みが進むためには,次のような3段階――①「このままではいけない」と気づかれ,②従来の考え方に取って代わる新しい考え方が生まれ,③その新しい考え方が多くの人々を捉え大きなうねりとなること――を経るであろうと述べた。そして前号では,公衆衛生領域における「②新しい考え方や方法」に当たるものとして,「ポピュレーション戦略」があること,その立案の根拠となる「健康の社会的決定要因(social determinants of health)」や,事前評価やモニタリングにあたる「健康インパクト評価(Health Impact Assessment)」にWHOなども注目し,動き始めていることを紹介した。
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