連載 ニュースウォーク・79
近ごろ「食育」ばやりですが
白井 正夫
1
1元朝日新聞編集委員
pp.1044-1045
発行日 2004年10月1日
Published Date 2004/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1664100644
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19世紀末に世界を旅した英国人女性,イサベラ・バードは1878年(明治11)5月,横浜埠頭に降りたった。47歳だった彼女は東北から蝦夷地への旅行を試み,4か月近くかけて目的を達した。彼女が歩いたのは西南戦争翌年の日本,その奥地である。
旅の従者は外国人と旅行経験があり,英語が少し書ける18歳の伊藤青年。通訳,料理,洗濯もする彼と月給12ドルで契約した。鉄道もなく,道中の先々で雇う馬と籠,そして旅籠や夜露をしのぐ農家の一間が頼りの旅だった。彼女は東北地方農村の貧しさ,文明開化から遠く離れた姿を一冊の本に書き残した。その東洋文庫『日本奥地紀行』(平凡社)には,当時の農村の姿とともに,旅の諸費用など日本人との交渉も生き生きとした筆で描かれている。
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