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対象の把握—社会的側面よりみた基本的生活行動の分析[1]
小板橋 喜久代
1
1埼玉県立衛生短期大学看護科
pp.149-156
発行日 1981年3月25日
Published Date 1981/3/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663907527
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はじめに—問題の所在‘
基本的欲求に基づく日常生活行動への援助’—これは,今日看護の基礎教育においては広く使われ,今なお主要なテキストブックである“看護学総論”(医学書院刊)の第2章の表題である(教育機関によってそれぞれ違いはあろうが,各種学校・専門学校,さらには大方の短期大学教育機関においてさえ,本書は主要なテキストブックとして学生の手に渡っていると思われる).そしてそこに盛られた内容は,いわゆる看護の主要な機能といわれる‘療養上の世話’を実現するための基礎となる看護技術(看護方法または手段)である.たぶんそれは,V. ヘンダーソン1)が‘看護の基本となるもの’として述べた14の基本的看護の構成因子から抽出されたものと思われるが,11の項目について日常生活行動への援助方法が解説されている.
しかし,いったいここでいう基本的欲求の‘基本的’とは何を指しているのか? 単に生理的レベルのことなのか,それともA. H. マズロー2)のいうように,‘基本的欲求’(basic needs)の中に人間のあらゆる欲求を配列し含ませようとしているのか.また,日常生活行動とはいったい何か.その言葉のとおり,日(約1日,24時間)の中で常に繰り返される人々の生活の体現のために取られる行動,などと解釈してみても釈然としないばかりか,いったい人間の生活行動はこの11項目でとらえきれるものなのか.
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