医学書院看護学セミナー記録
講演 看護学における客観主義的偏向の克服—[その1]
薄井 坦子
1
1千葉大学看護学部
pp.118-124
発行日 1981年2月25日
Published Date 1981/2/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663907523
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現在の看護理論研究に対する2つの危惧
全国からお集まりの皆さんに対して,‘ようこそ千葉へ’ということばが自然に出てくるようになりましたが,私が千葉大学に来て,今年(1979年)はもう5年目になります.1年目には,ことあるごとに‘女子医大では’と前の職場のことが頭をもたげてきて,‘いけない!’と自制しなければ看護学部の人間として発想できなかったものです.人間の認識の変化というものは面白いものだなあと思います.
今日の私のテーマは大変かたいものですけれども,私が一番申しあげたいことは,人間とはなんと面白い存在であろうか,そして,人間の面白さの本当の中身は,その人その人の感じ方・考え方,つまり認識の面白さではないかということです.看護の仕事はこういう人間を対象として,同じくそういう人間が働きかけるという特徴をもっているのですから,われわれが看護学をうち立てようと取り組む場合,このひとりひとりの人間の面白さとか,人間同士のかかわりあいの面白さ,切なさ,苦しさといったようなことをすべてひっくるめて,一般的にも特殊的にも説明できるものをめざさなければならない,この姿勢を失ったならば看護学は確立できないし,看護を発展させていく理論を創造することもできないということです.
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