Editorial
「昼の時間」と「夜の時間」
藤沼 康樹
1
1医療福祉生協連家庭医療学開発センター
pp.9
発行日 2026年1月15日
Published Date 2026/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.218880510360010009
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ジョルジュ・バタイユ(1897-1962)は、哲学、文学、宗教学、経済学、人類学などを接続し、「生の過剰」を中心的なテーマとして多くの作品を残したフランスの思想家である。彼にとって人間とは、理性や秩序を超えて、死や狂気、聖なるものへと触れようとする存在として考えるべき対象であった。そんなバタイユの思索の核の1つが「昼の時間」と「夜の時間」という対概念である。ここでは、この対概念から健康観を捉え直してみたい。
昼の時間に属する健康観は、整っていること、機能していること、そして社会的に生産的であることを意味する。数値で測定でき、論理的に説明でき、自己管理のもとに維持される身体。われわれはそのような「陽光の下の健康」を目指して、日々の生活を律している。バタイユが言うところの昼の時間とは、理性、合理性と秩序の支配する世界であり、そこでは死も、狂気も、涙も、語ることが禁じられる。健康とは管理の別名になり、生命は「正しく生きるためのリソース」に変えられてしまう。

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