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田舎の精神科医のつぶやき
片桐 隆
1
1国立小諸療養所
pp.270-277
発行日 1979年5月25日
Published Date 1979/5/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663907333
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はじめに
時々ふと,私の心をよぎる疑問がある.それは,私はなぜ精神科の医者などに成ったのかという,物思いとも疑問ともつかない莫然とした観念である.
こんな田舎の精神病院へも看護の学生さんが実習に来られる.その中の1人か2人が,‘先生はなぜ精神科の医者になったのか’と,不思議そうな目つきで尋ねられることがある.ほかの質問にはそれなりにもっともらしい返事が口をついて出て来るが,この質問には困る.うっ,としばらく黙っていて,‘いやその,ちょっとしたきっかけで’とか‘友人がなったもので,その友人とまあ仲良かったので,つい……’などと,返事にもならない返事をしどろもどろにしてしまう.
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