ルポルタージュ 女と靴下・1
カラス部隊いまなおがんばる
鈴木 俊作
1
1千葉県保育専門学院
pp.311-315
発行日 1978年5月25日
Published Date 1978/5/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663907212
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
白衣に包まれた女たちの長い歴史は,そのすべてを呑みつくし,巨大に脹れあがる時代のうねりの連なりにも例えられよう.鈴木氏の眼は,時代の波に我が身を漂わせながら息づく女たちのライフ・ヒストリーを追う.働く女たちの様々な生活風景の中に視たもの,感じたこと…….これらは白衣の世界に生きる者へのメッセージであり,また同時代に生きるひとびとへの心伝えである.
行商のおばさんたち—彼女たちをなぜ‘カラス部隊’と呼ぶかについては,2通りの説がある.ひとつには,彼女たちの背負い籠が一様に紺木綿のごわごわした布にくるまれているので,それをカラスの羽の色にたとえたのだという説,いまひとつには彼女たちの平均年齢は50歳,‘カアチャン部隊’と呼びたいところをぐっと押さえてカラスの鳴き声に掛け,カラス部隊と呼びならわしたのだという説,いずれも“広辞苑”なぞには見あたらない珍説で,あまり当てにはならないが,千葉に来てカラス部隊と言えば,毎朝,東京にくりだす行商のおばさんたちを指すことにまちがいない.
Copyright © 1978, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.