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今回はまるでオリンピックの応援みたいな題ですが,日本人研究者の活躍について。留学中は当然のことながら,日本の学会や邦文誌ではなく英文誌を通して眼科の最新知識を学びます。そこで最近特に強く気がつくのが,日本人研究者の活躍です。私の専門領域,というか関心の強い分子生物学では,たとえばDr.Dryjaの研究室で網膜色素変性症や白点状網膜症がペリフェリン遺伝子の異常により惹起されることを発見した梶原先生がいます。1994年には,複数遺伝子が関与して遺伝子病に至るという大胆な仮説を発表しました。彼の研究は「Nature」,「Science」誌といった権威誌に掲載されたことが示すようにきわめて高い質の業績であり,たぶん私の世代の日本人眼科医の業績がかつてのDuke-Elderのような格式高い教科書に引用されるとすれば,彼の業績だと思っています。本邦眼科において分子遺伝学研究の導入期,「アメリカで見つかった遺伝子異常を確認しているだけで,日本にしか通用しないんじゃないか」という批判が一部にありました。ところが,この2,3年の論文をみると「Arch Ophthal—mo1」,「Am J Ophthalmol」誌などの眼科権威誌に,東北大,慶應義塾大,順天堂大などで行われた“100%made in Japan”の論文が次々と掲載されています。上記の批判に対して,優れた質の研究内容の論文発表の事実をもって反論した,といえます。最近の欧米誌で日本人の名前をみないでいる方が難しい状況になっています。また日本から欧米誌に臨床研究の論文を発表するのはきわめて難しい,と何度か耳にしました。ところが最近だけでも「trabeculectomy+mitomycinC」,「HTLV-1ぶどう膜炎」,「corneal lattice degenera-tion」,「黄斑部前硝子体ポケット」,「dry eye・ocular-surface」,「ウイルス感染症DNA診断」,「免疫抑制剤」,「HLA遺伝子タイピング」などに関する一連の業績は一流の欧米誌に掲載されただけではなく,それぞれの領域で欧米の模倣ではなくむしろ欧米臨床研究を牽引しているように思います。上記したのはごく一部で,もっとたくさんの素晴らしい“100% made in Japan”の業績があります。基礎研究領域では,それこそ並べきれない程です。ためしに1993年度の権威誌の原著論文のなかでの日本人占有率を見て下さい(表)。
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