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看護教育における教育権と公教育
鈴木 俊作
1
1千葉県保育専門学院
pp.476-484
発行日 1977年8月25日
Published Date 1977/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663907122
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日本における教育権の推移
教育とは,単に知識や技術の伝達ばかりでなしに,ひとりの人間をつくりあげる仕事であり,そのかけがえない仕事の遂行にあたっては,社会全体の責任が問われなければならぬという認識は,ルソーやコンドルセー,あるいはペスタロッチやロバート・オーエンなど,多くの思想家たちの手で積みあげられてきたものである.それではこの理念としての教育のあり方が,現実にはどのように具体化しているかということになると,世界各国各民族においていずれも満足すべき状態に達しているとは言い難く,世界の教師,教育研究者たちに焦眉(しょうび)の急を要する問題として意識されていることは周知である.
とりわけ諸外国の砲筒の脅威にさらされた結果,市民革命を経験することなしに封建的土壌に,一挙に上からの資本主義経済制度を纒(まと)わなければならなかった近代日本の場合,公教育における教育権の確立という仕事は,諸外国に比してはるかにたち遅れを見せていると言わなければならない.
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