日本看護協会看護教育問題研究会分担研究報告・2
看護をとりまく諸問題と理論形成—‘国民看護’の理論を目指して
宗像 恒次
1
1日本看護協会調査研究部
pp.25-32
発行日 1975年1月25日
Published Date 1975/1/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663906849
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はじめに
私たちが目指す最終的な目的は,国民と看護婦の間に生き生きとした交流としての看護を回復しようとすることにあり,私たちはそのような交流の中にこそ,健康向上のプロセスを位置づけることができると考えている.
ところで,このような目的設定から既に予想されるように,日本の現実の看護は国民と看護婦の間に生き生きとした交流というものが閉ざされており,しかもその形骸化された交流に生の息吹を吹き込むべき手立てを示唆すべき理論さえも形骸化している.しかし,といって私たちは,看護婦自体に国民との生き生きとした交流を求める意志がないとか,看護研究者にそのような意志がないとかいっているのではない,むしろ逆である.彼女らに国民との生き生きとした交流というものを求める意志があり,かえってそのように思い込んだ意志があればあるほど,交流自体を形骸化せざるをえなかったという,自己疎外的状況にあるということである.そして,その自己疎外的状況の中にこそ逆に,彼女らの国民との生き生きとした交流を求める意志と期待をはっきりと読みとれるということを,私たちは主張したいのである.
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