ニュースの焦点
ワクチン豚事件をとりまく諸問題
尾形 学
1
1東大農学部・家畜微生物研究室
pp.310
発行日 1967年5月15日
Published Date 1967/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401203468
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2月下旬,東京・品川で発覚した豚コレラワクチン豚密売事件に端を発した不法肉の問題は,全国的規模に広がり国民の食生活を不安のどん底に陥しいれた。その後の調査によって,さらに狂犬病ワクチンヤギの肉や,問題は異なるが,養鶏場で大流行したニユーカッスル病の感染鶏や死骸が食肉として販売された疑いがでるなど,さらに恐怖は広がり,放射能マグロ事件以上の大混乱となったことはよく知られているとおりである。
本事件の主体をなした豚コレラが人にまったく感染しないものであったことは不幸中の幸いであった。しかし一応安全とはいえ,ワクチン製造後の動物の残骸が,知らないうちに健康な肉として販売され食膳にあがったという事実がたまらない不潔感を与え,国民の怒りを爆発させたのである。
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