新カリキュラム講座 一般教養課目・6
法学編I
高窪 利一
1
1中央大学法学部
pp.86-89
発行日 1967年12月1日
Published Date 1967/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663905930
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法と社会
ひと口に,「法」といっても,この言葉は,いろいろなニュアンスをもっている。かつて,法は,神仏の摂理を意味し,また,いつの世にも変らない人間の意思で変えられない,絶対的な原則(いわゆる正法または自然法)を意味したことがある。現在も,この意味において,「法」という言葉を用いることもある。信教において,「法を説く」といい,あるいは,生物学において,「メンデルの法則」というような例が考えられる。しかしながら,法学の分野に関するかぎりは,「法」という言葉は,現在では,「人間の意思に基づいてつくられた人間社会の規範(ルール)」を意味する。
「規範」という言葉も大変に厄介な言葉であるが,要するに,「秩序を保つための取りきめ」というような意味である。アリストテレスの言葉に「人間は政治的生物である」という言葉があるが,人間社会は,人と人とのつながりの中で,政治を運用し,経済を維持し,文化を創造していく集団であるから,一人一人が,それなりに幸福な生活を送っていくためには,お互いが,生活の取り決めを守って,集団の秩序を保っていくことがぜひとも必要である。そして,取りきめが守られるためには,ある程度の拘束力をもつことが必要である。法は,かなり強い拘束力をもった“社会規範”である。
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