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タウプロテインキナーゼI(TPK I)
内田 庸子
1
,
石黒 幸一
1
1三菱化成生命科学研究所
pp.1030-1031
発行日 1992年11月1日
Published Date 1992/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543901331
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アルツハイマー病は初老期(45〜65歳)に発病する進行性痴呆で,病理学的にはその脳内に多数の老人斑と神経原繊維変化が認められる.また,自然老化による老年痴呆も病理学的に差がないのでアルツハイマー型老年痴呆と最近は呼んでいる.この疾患の患者数は高齢者の増加とともに増え,社会的に重要な疾患である.その原因は不明で早期解明が望まれている.
2つの病理変化は知能障害の程度と相関して出現するので,この変化を生ずる不溶性の蓄積物質の解析から病因に迫ろうという研究の流れが生じた.その1つ,神経原繊維変化は神経細胞内にpaired helicalfilament(PHF)といわれる異常な繊維が蓄積するもので,その成分としてタウ蛋白質が同定された.タウは脳に特異的な微小管付随蛋白質の一種で,正常脳では神経細胞の突起内の微小管の形成を促進したり,微小管を束ねる役割を担っている.PHFに組み込まれたタウは通常のタウより強くリン酸化されている.アルツハイマー病脳では,このタウの異常なリン酸化が“PHFの蓄積”につながり,神経細胞の変性,やがて細胞死を招くと想定すると,PHF中のタウと同じようにリン酸化されたタウを生ずるプロテインキナーゼを探索し,そのリン酸化機構を明らかにすることがアルツハイマー病の病因を解く1つの緒と考えた.
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