教育のひろば
頭と手と心臓
砂沢 喜代次
1
1北海道大学教育学部
pp.5
発行日 1967年12月1日
Published Date 1967/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663905917
- 有料閲覧
- 文献概要
教育というものは,どのような場合でも,そこに人間と人間との直接的な関係があり,そのなかで,どちらの人間も相手から何らかの影響を受けて,おたがいに変っていく,そして徐々にあるいは急速に好ましい人間になっていくものである。もちろん,そのような直接的な人間関係を土台として,教え・学ぶというはたらきが成立つことが教育的関係であるとしても,そのためには“何を,どのように”という,教授・学習の内容と方法が,しっかり考えなられなければ“好ましい人間”にはなれないのである。
このように,教育は第一義的に人間の問題であり,どのような種類の,どのような場合の人間関係であっても,その根底には“人間教育”の理念が横たわっていなければ,たとえすばらしいカリキュラムや方法技術が用意されても,“好ましい人間”になっていくことはむずかしい。“教育とは人間が人間を人間にすることである”,と昔から言われてきているのに,わたしが,あえて“教育とは人間が人間によって(好ましい)人間になる”と言うのは,自分の力で人間になるという,自発性や主体性を大切にすることと同時に,“教えることは学ぶことである”と言われてきたように,教える人間もまた,教えられる人間から学びとることが多く,そのことによって人間になることを見おとしてならないからである。
Copyright © 1967, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.