教育のひろば
科学と道徳
宮田 丈夫
1,2
1お茶の水女子大学
2お茶の水女子大学附属中学
pp.1
発行日 1966年6月1日
Published Date 1966/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663905632
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今日のところ科学は異常な進歩をとげつつあります。このような科学の進歩は人間生活の向上に大きな貢献をしていることは事実です。しかし反面,科学の進歩が人間生活をゆがめるようになっていることも事実です。というよりもむしろ,科学の進歩と平行して道徳が人びとの身についていないことが,科学を窮地に追いこむ原因になっているようにみられるわけです。科学と道徳の跛行現象が異常な社会不安をかもし出すということにもなっているわけです。
このような跛行現象は過去にもありました。いわゆる1929年から33年にわたる極度の社会不安の時代が,それに当たるのです。この社会不安の時代を迎えて,社会の人たちは,なぜこのような窮地に追いこまれるようになったかについて,歴史的な反省をしたようです。そこで思い当たることに2つありました。その1つは,社会の人たちがあまりにも利己的になっているということです。自分さえよければそれでよいとする考え方が,お互いの間に壁をつくってしまうようになったわけです。
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