特集 看護教師のあり方
—現場の指導者として—盛り上がった意欲も現場の多忙で失われていく—指導者講習会に出席して
駿河 美佐子
1
1賛育会病院
pp.12-14
発行日 1965年5月1日
Published Date 1965/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663905450
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不安のうちにはじまった
オリンピックを目前にひかえ,原宿周辺はあわただしい空気の中にも活気が満ちあふれていた。私は時間に遅れそうなので,駅からかけて来たためハァハァするのをこらえながらそおっとホールの扉を押した。看護協会の3階では60名近くの受講生が,町のはなやいだ雰囲気とは違い,ややくたびれた感じで,おとなしく開講式を待っていた。堅苦しい会場の様子を想像してきた私は一瞬拍子ぬけがし,自分の席を探してキョロキョロあたりを見まわした。扉のすぐ近くの机の上に自分の名札を見つけた。式に間に合ったという気持と,すぐ席が見つかってよかったという安堵とともに,いくらかの気おくれとためらいを感じながら席についた。さらにとまどったことは,隣席に若い男性がいたことである。報道関係の人ぐらいに思っていたが,そのうち,彼が立派なリカバリー勤務の看護人で受講生の一人であることがわかり,今まで身近かに感じたことがなかった看護人というものに対して,考えをあらたにした。名札といっしょに置いてあった時間割を手にして,今日は式とオリエンテーションぐらいに思ってきた私は,午後には教育心理というむずかしそうな科目が始まり,以後教育原理,教育方法,看護学校管理,社会心理,病院管理など豊富な内容がビッシリ折り込まれているのにびっくりした。こりゃたいへんなことになってしまったと,半分逃げ腰になってしまった。
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