教育のひろば
相談精神と教育
沢田 慶輔
1
1東京大学
pp.1
発行日 1965年5月1日
Published Date 1965/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663905446
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小,中,高校における教育相談に対する関心の高まりは,最近の学校教育界の特筆すべき一傾向であろう。昨日も東京都の研究指定校の発表会に参加する機会をもったが,その中学校では,学級担任の先生方も相談に当たる試みをこの1年間されたということであった。もちろんすべての学級担任の先生方が高い水準の相談をされたというわけではないのであろうが,この1年間の経験は学校教育に大きなプラスとなったという報告がなされた。ひとりひとりの生徒の必要に応じようとする心構え,そのためにはひとりひとりの生徒に自由に発言させ,そのよい聴き手となり,生徒の気持に対する共感的理解につとめることは相談では最低の必要条件であるが,教師がこのような態度で生徒に対することは,相談に限らず,ふつうの教育場面でも,生徒の自発的能力の開発を意図するものであれば,ぜひ努力さるべきことである。最近の学習指導法の強調点は,学習者の創造的思考力の開発におかれるようになってきているが,その基盤としては,学習者が自由で安全であると感ずることができる雰囲気がなければならないことは明らかなことである。学習者の自発性が信頼されるならば,予想されなかったようなすばらしい成果が達成されることが多い事実は,わたくしたちが虚心に認めなければならないことであろう。
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