特集 地域精神衛生活動と保健婦
第I部 地域精神衛生行政の現状と諸問題
精神衛生相談員制度をめぐって
小坂 英世
1
1東京都精神衛生センター
pp.30-33
発行日 1967年11月10日
Published Date 1967/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662204058
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1.精神衛生相談員制度の誕生
昭和40年に一部改正される以前の精神衛生法にも,その第42条に訪問指導はうたわれておりました。ただし,空文化していたのが実情でした。ところが,昭和30年代の後半にいたって,各地でその実施が行なわれたり,論議されるようになりましたが,それにつれて,この業務の担当職員をいかなる職種にするかということも,大いに論議されるようになってきました。というのは,当時の第42条には,訪問指導を担当する職員については,当該吏員または医師,としか規定してなかったからです。そこで,私のように保健婦をこれにあてるべきだとするものもあれば,それに反対してソーシャル・ワーカーでなければならないとするものもあり,あるいは事務員をあてる地方もあるというありさまでした。
このような折に,例のライシャワー大使刺傷事件が起きました。この事件の直後に政府が意図したのは,精神衛生法を改正して,警察官によって在宅精神障害者を監視させようということでした。とうぜんのことながら,精神医療関係者と精神障害者の家族はこれに反対して,精神衛生審議会の開催と,公衆衛生関係職員による訪問指導の制度化を要求しました。その結果,1年近い審議・運動の末,精神衛生法(同時に保健所法)は一部改正され,精神衛生相談員制度が誕生しました。
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