編集デスク・26
まだ安い本の値段
長谷川 泉
pp.56
発行日 1963年4月1日
Published Date 1963/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1663904364
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戦前との物価指数の比較で現在安い物価は医療費と出版物の値段である。出版物は,一時にくらべるとかなりこの1年間に値段が上昇した。しかしそれでも,戦前の物価にくらべると300倍以下であろう。例を岩波文庫にとってみても星一つ20銭だったものが50円になっているから250倍だというわけである。これは単純に物価の点だけからいえば安い。郵便料金でも333倍だし,ほかの一般物価にすれば400倍から500倍ぐらいだというわけである。
その出版物も,製版代や印刷代や製本代の値上げによって,やむを得ず,一般物価なみに上がろうとしている。印刷物が一国交化の消長に与える位置と効果ははかりしれないものがあるから,せめて印刷物の値段くらいは一般物価の上昇にくらべて例外的に安いといった状態は保持したいという希望を持ちたいところだが,それがそうはゆかなくなって来た。残念である。
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