扉
温床に安んじない
pp.4
発行日 1958年10月15日
Published Date 1958/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661910699
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先日ある関係雑誌をよんでいましたら,中年の保健婦さんの自己反省の記事がのつていました。非常に素直に書かれていましたし書かれていることの内容が,私共ナースのお互いに考えさせられるもののあることを感じ御紹介をかねて考えてみたいと思いました。その保健婦さんは,看護婦から保健婦の生活を,20年くらいもつづけて来た独身の,熱心な働き手であり,ある市役所に勤めていました。ところが,その市役所に人事移動があつた時,何の前ぶれもなく,突然命令があつて,彼女は同じ市の経営する病院の事務の仕事をすることになつてしまつたものでした。自分に行われたこの措置について彼女は冷静に自分を反省したのでしたが,そして結論として2つのことを出しました。その1つは「自分は手馴れた仕事の中に安易に座りこんで,自らを必要に応じて成長させなかつた」ということで,他の1つは,「自分の立場を主張しすぎた」ということでありました。
この2つの考えはちよつとムジユンするようにみえますが,実はそうでなく.手馴れた仕事に安んじる気持は,何か事件にあうと,自己弁護の形となつて自分の立場を強く主張するということになるのは珍らしくありません。
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