連載 研修おたく海を渡る・66
医療の値段
白井 敬祐
pp.1103
発行日 2011年6月10日
Published Date 2011/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402105239
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今アメリカではオバマ政権がすすめるObamaCare(オバマケア)と呼ばれる医療保険改革が大きな話題となっています.実際の臨床現場にも,ずいぶん影響が現れています.
アメリカでは,pre-authorizationと呼ばれる保険会社やMedicareなどの支払機関からの事前許可という仕組みがあります.日本のようにあとから審査するのではなく,事前に保険会社が支払いの可否を決定するのです.高価な抗がん剤だけでなく,慢性疾患に使う薬や画像検査をオーダーするにも,この事前許可が必要になるケースがかなり増えました.外来常駐のファイナンシャルカウンセラーや看護師が申請してくれるのですが,この作業にかかる時間は半端ではありません.審査ではまず,フリーダイヤルに電話し,長い保留の音楽を聞かされたあと,患者の状態,代替薬は試したか,どれくらいの期間使うつもりか,といった質問に延々と答えます.待ち時間を入れて一件の申請に30分以上かかることもあります.そこからさらに許可を得るのに早いときで数時間,遅いときは1週間ほど待たされるのです.これではタイミングのよい治療も難しいのです.
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