コンタクトレンズ(34)
高くなつてきた印刷物の値段
長谷川 泉
pp.51
発行日 1962年6月10日
Published Date 1962/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662202594
- 有料閲覧
- 文献概要
岩波文庫の星1つが50円になつた.印刷物の値段の値上がりが,どうもめだつて来たようである.元来日本の印刷物の値段は安かつた.洋書とくらべてみれば,その点はよくわかることである.一般の物価が,それほど違わないのに,本だと日本では360円,すなわち1ドルぐらいだと思うものがアメリカあたりでは3ドルぐらいはしていた.ドイツの本だともつと高い.それがどうも,洋書とそれほどめだつて違わないくらいに値上がりするような傾向にある.これは困つたことである.しかし眼をそむけることのできない現実である.
たしかに本は安すぎた.戦前の物価指数の200倍以下であつた.今時戦前の物価指数の200倍以下という値段のものはない.郵便料金にしてもほぼ333倍である.風呂代も理髪代も400倍くらいであろうか.とにかく,今まで本は安すぎたようである.そして,その安い本に依存して日本の文化の高い普及度が支えられて来たとすれば,これは大いに評価しなければならないことだ.
Copyright © 1962, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.